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災害時の開示 PART3-6:三洋電機(招集通知)(2011/3/29)

今回は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際に、平成17年3月31日に終了する年次決算について三洋電機(株)が作成した定時株主総会招集通知に添付された営業報告書での開示内容を解説したいと思います。

以下の開示例では災害に関連して、4か所に記載されています。

@ 1. 営業の概況
(1)企業集団の営業の経過および成果
  全般的概況
  ⇒ 利益の減少要因の一つとして記載されています。
    また、株主へのお詫びも記載されています。
    さらに、期末の利益配当金を見送る旨も記載されています。

A 1. 営業の概況
(1)企業集団の営業の経過および成果
  部門別の概況
  ⇒ コンポーネント部門の売上高の減少要因の一つとして記載されています。
   
B 1. 営業の概況
(2)企業集団の今後の見通しと対処すべき課題
  ⇒ 被災した半導体事業の復興を課題の一つとして記載されています。。
   

以下が、実際の開示内容になります。

======================================
三洋電機株式会社 営業報告書
(平成16年4月1日から平成17年3月31日まで)

1. 営業の概況
  (1)企業集団の営業の経過および成果
    全般的概況
(中略)
さらに、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震により、当社グループの半導体主力製造拠点の1つである新潟三洋電子鰍ェ被災した影響で、半導体事業を中心に大幅な損失を計上するに至りました。
この結果、当期の売上高は2兆4,846億円と前期比0.9%の減少となりました。このうち、国内売上高は1兆2,594億円で前期比0.6%の減少、海外売上高は1兆2,251億円で前期比1.3%の減少となりました。
利益面では、営業利益は423億円で前期比55.7%減少し、地震災害損失などにより税引前純損失は649億円となりました。これに加え、繰延税金資産の回収可能性を厳格に判断し、その一部を取り崩した結果、当期純損失は1,715億円となりました。株主の皆様には多大なご迷惑とご心配をおかけすることとなり、
誠に申し訳なく深くお詫び申し上げます。
なお、期末の利益配当金につきましては、多額の損失を計上することから見送りとさせていただきたく、何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。

1. 営業の概況
  (1)企業集団の営業の経過および成果
    部門別概況
部門別の概況は次のとおりです。
(中略)
コンポーネント部門
電池は、原材料価格の高騰や完成品市場の価格下落などの影響がありましたが、米国住宅市場が好調に推移したことで電動工具向けのニカド電池の売上が大きく増加し、携帯電話向けなどのリチウムイオン電池も引き続き堅調に推移しました。また、太陽電池も需要の伸びが大きく、生産を増強したことから売上が大幅に増加し、電池全体の売上は増加しました。また、米国フォード社および本田技研工業鰍ヨ、ハイブリッド自動車(HEV)用二次電池の供給を開始しています。
しかしながら、新潟県中越地震により半導体主力製造拠点の1つである新潟三洋電子鰍ェ被災した影響で半導体の売上が大きく減少し、光ピックアップも価格下落の影響により減少しました。
なお、液晶事業につきましては、平成16年10月1日にセイコーエプソン鰍ニ合弁で三洋エプソンイメージングデバイス鰍設立し、持分法を適用したことから売上の減少要因となりました。
以上の結果、当部門の売上高は9,464億円で前期比3.9%減となりました。

1. 営業の概況
  (2)企業集団の今後の見通しと対処すべき課題
今後の経済情勢は、世界経済は全般的に拡大傾向ながら、米国や中国での金融引き締め・景気減速の可能性をはらんでおり、国内景気においては踊り場からの脱出へ向けた模索が依然として続くものと予想されます。また、「環境」と「デジタル」が本格的に経済を牽引すると期待される中で、当社グループにとってのビジネスチャンスは広がるものの、経済のグローバル化の進展によって企業間競争はますます熾烈化し、また、IT分野を中心とした在庫調整による販売価格の下落、原油価格や原材料価格の高騰などにより、当社グループを取り巻く経営環境は一層厳しいものとなる見込みです。
このような状況の下で、当社グループは急激かつ厳しい経営環境の変化に即応し、より明確に顧客・市場と向かい合い、スピードある意思決定を行うために、平成17年4月1日付で、従来の企業グループ制・ビジネスユニット制をさらに進化させた「8つの事業グループへの細分・再編」および「小さくかつ強い本社への再編」を軸とした組織改革を実施しました。
この組織改革では、特に、自動車関連事業を担当するオートモーティブカンパニーや医療・バイオ関連機器を担当するメディカル事業本部の新設などによって、当社グループの将来の重点事業を鮮明にしました。また、従来より取り組んできた「デジタル&デバイス(D&D)」、「エナジー&エコロジー(E&E)」、「コミュニティ&キャピタル(C&C)」の各事業ドメインのさらなる成長へ向けた事業基盤の強化を行うことで、事業により一層専念できる攻撃的な体制への変革を図っていきます。
また、今後の成長の起爆剤として、ブランド本部、HAインターナショナル本部、コーポレートクロスファンクション推進本部などを新たに設立し、それぞれの組織が、三洋ブランドの再構築、海外における売上の拡大およびグループ横断的な機能強化を徹底的に追求することによって、企業競争力の向上を推進していきます。
こうした新経営システムの下、新潟県中越地震で被災した半導体事業の復興のみならず、経営陣についても刷新を図り、厳しい経営環境からの復活と進化の実現に挑戦していきます。そのためには、これまで培ってきた経営資源も最大限に活用しながら、当社グループ全体の構造改革を敢行し、有利子負債削減など財務体質の健全化ならびに成長できる事業構成への変革を一層加速していきます。
当社グループにとって、創業以来類を見ない大変厳しい経営環境下ですが、これら一連の改革にグループ一丸となって挑み、高収益・筋肉質で攻撃的な企業への変革に向けて不退転の決意で臨む所存ですので、株主の皆様におかれましては、引き続き一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
======================================
以上です。

なお、本コラム「カレント・トピックス」のPART3-1から3-6で取り上げた、三洋電機株式会社の開示資料は、以下のURLで閲覧できます。
http://sanyo.com/ir/jp/library/financialreports.html


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災害時の開示
Part1:災害時の決算処理(2011/3/18)
Part2:特定非常災害特別措置法(2011/3/28)
Part3-1:三洋電機(適時開示−地震発生から2日後)(2011/3/29)
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Part3-6:三洋電機(招集通知)(2011/3/29)
Part4:後発事象の開示事例集(2011/3/30)
Part5:法務省「定時株主総会の開催の延期」について(2011/3/30)
Part6:有価証券報告書での開示事例集(2011/4/1)
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Part8:協会会長通牒にある『阪神・淡路大震災に係る災害損失の会計処理及び表示について』(2011/4/6)
Part9:東日本大震災の四半期報告書での開示事例集(2011/4/13)
Part10:国税庁の「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(2011/4/18)
Part11:国税庁の法令解釈通達「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」と質疑応答事例(2011/4/22)
カレントトピックス
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IFRS開示事例研究
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子会社のIFRS
Part1:組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方
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(2013/2/3)
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個別論点IFRS
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Part16:製品原価計算項目の会計基準差異の税務上の取扱い(2012/3/13)
  Part17:棚卸資産の評価とAging(長期滞留)(2012/5/23)
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  Part20:有給休暇引当金の対応事例(2014/1/24)  
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  Part23:開発費資産計上の実態と分析(2014/11/10)   
  Part24:賦課金の会計処理と固定資産税(2015/11/18)  
  Part25:闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題(2016/9/9)   
  
IFRS対応プロジェクト最前線
Part1:影響度調査での重要性(2010/10/19)
Part2:影響度調査が終わったら(2010/10/25)
Part3:グループ会計方針(2010/11/23)
Part4:影響度調査後のプロジェクト体制 (2010/12/9)
Part5:公開草案への対応 (2011/1/7)
Part6:影響度調査の盲点 (2011/1/21)
Part7:IFRS適用時の監査対応 (2011/2/21)
Part8:2011年3月時点でのIFRS対応状況(2011/3/14)
Part9:IFRS適用時期と大震災(2011/4/27)
Part10:中国子会社の決算期ズレへの対応方法(2011/5/18)
Part11:IFRSでの勘定科目体系(2011/5/27)
Part12:グループ会計方針での重要性の判断規準(2011/6/1)
Part13:自見庄三郎金融担当大臣の談話に関する留意点(2011/6/27)
Part14:6月30日の企業会計審議会の議論について(2011/7/14)
Part15:IFRS適用の今後の展開予測(2011/7/14)
Part16:さまざまなグループ会計方針書(2011/8/31)
Part17:IFRS決算体制はいつから検討するか(2012/2/8)
  Part18:馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット(2012/4/11)
  Part19:金融商品としての売掛金の開示(2012/4/24) 
  Part20:うちはどうするIFRS?(2012/6/19)  
  Part21:膨大な注記への対応(2012/7/31)
  Part22:定額法への減価償却方法の変更の動向(2012/8/27) 
  Part23:減価償却方法変更の記載事例(2012/9/16)  
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  Part25:監査法人へのIFRS対応報酬の支払状況(2012/11/12)  
  Part26:IFRS任意適用の動向(2013/4/2) 
  Part27:J-IFRS(日本版IFRS)のねらい(2013/6/20)  
  Part28:IFRSの任意適用を拡大させる第一弾か?(2013/6/23)   
  Part29:IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割(2013/9/2)    
  Part30:日本企業同士の合併とIFRS(2013/10/11) 
  Part31:新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか(2013/12/24)  
  Part32:自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載(2014/6/5)
  Part33:骨太の方針とIFRS(2014/6/27)  
  Part34:任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性(2015/1/13)     
  Part35:注記情報の大幅削減が可能に!!(2015/2/9)  
  Part36:開示ボリュームを激減させる具体例(2015/5/14)   
  Part37:連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況(2015/6/9)   
  Part38:IFRS適用の対応コスト(2015/6/9)     
  Part39:4つの会計基準収斂の方向性(2015/6/9)  
  Part40:IFRS財団は日本の現状をどう見ているか(2015/7/28)   
  Part41:丸紅の初度適用(短信からの初度適用)(2015/9/8)   
  Part42:単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き(2016/9/9)
  Part43:米国基準を適用している企業の動き(2017/3/15)
  
中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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