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中田版『IFRSの誤解』 Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)

【誤解】IFRSのリース会計基準には300万円ルールなどがないので、ファイナンス・リースは少額物件でも資産として認識する必要がある。
  ↓
【実際】IFRSのリース会計基準には、日本基準にある300万円ルールなどの明確な数値規準はないが、重要性の考え方があるので、ファイナンス・リースでも少額であれば資産として認識する必要はない。
ただし、各企業で重要性の判定する数値基準を設定する必要がある。

私はIFRS対応プロジェクトの現場で、全く異なる対称的な対応をしたケースを目の当たりにしました。

一つは、IFRSを適用するに際して、日本基準である、いわゆる300万円ルールをそのまま踏襲して、300万円未満のリース契約については、従来通りオフバランスとする手続きにしたケースです。
これを「従来ケース」としましょう。

もう一つは、IFRSを適用するに際して、300万円ルールを採用せず、有形固定資産会計における少額資産と同じように、20万円以上のファイナンス・リース契約をすべて資産として認識する手続きにしたケースです。
これを「厳格ケース」としましょう。

「従来ケース」の根拠は、

従来日本基準で処理した連結財務諸表が、著しく実態とかい離していたわけではない。したがって、監査報告書でも、投資家の意思決定に有用な財務情報として「適正意見」を表明していたはずである。ゆえに、従来の数値基準が必ずしもIFRSにおいて否定されるべきものではない。

というものです。

「厳格ケース」の根拠は、

有形固定資産会計とリース会計で重要性の判断基準が異なるというのは整合性に欠ける。したがって、リース会計についても20万円ルールを適用する。

というものです。

どちらが正しいというわけではありません。

大切なポイントは、自社での重要性の考え方をきちんと確立しておくことです。
そうしないと、厳格な対応を迫りがちな会計監査人に対して、自社の主張を説明することができなくなります。
「軸」となる自主基準をもっていないからです
そうなると、監査人からの「アドバイス」で結果として、連結財務諸表に大した影響のないリース契約まで資産として認識せざるを得なくなります。
これではリース台帳に登録する物件数も膨大になり、その会計処理も大変煩雑なものになります。

私個人の意見としては、上場企業の規模にもかなりの差はありますが、1件300万円の物件が連結財務諸表に大きな影響を与えることは少ないのではないかと感じます。
したがって、せっかくIFRSで日本基準と異なる重要性の判断規準が作れるのであれば、日本基準よりもゆるやかなものにして、連結財務諸表に与える影響が大きくないことを主張するべきと思います。

ただし、ここで注意が必要なのは、個々の取引での重要性の判断基準と、同種の取引が多数あって、その合計でみた重要性の判断規準とでは、きちんと区別して基準を検討する必要があるということです。

例えば、営業用のリース車両が1台200万円くらいであっても、連結グループ全体で同様の営業用のリース車両が1000台利用されていれば、全体では20億円という金額の影響について重要性の判断をすべきということです。

実は、公益財団法人財務会計基準機構(FASF)が2014年2月5日に開催した「ASBJオープン・セミナー」で、IASB理事の鶯地隆継氏が、最近のリース会計の動向について、興味深い講演をされていました。
その講演の中で、現在IASBはリース会計の会計基準の改訂作業を行っているが、2013年に公開した再ED(公開草案)に対して、世界中から、特に財務報告の作成サイドから大変強い反対意見が寄せられたようで、その反対意見への対応の一つとして、「少額リースに対するコスト面の救済措置」が議論されているというお話がありました。

この『少額リース(small ticket leases)』という考え方が、IFRSの基準設定プロセスにおいて出てきていることについて、大変気になります。

その講演で鶯地氏は、
「この『少額』というのが、日本基準の300万円ルールのようなものになるのか、いくらになるのか、そして、個々の金額だけではなく、合計した金額での取り扱いも議論されている」という説明をされていました。

そもそもリース会計がIFRSで見直され、リース契約がどんどんオンバランスの方向で検討されて来たのは、航空会社の航空機の多くがオペレーティング・リースとして取り扱われ、資産として貸借対照表のどこにも計上されておらず、到底納得できないという意見も大きく影響していたといわれています。
そうであるならば、航空会社の航空機のような、本当にその企業のビジネスにとって重大な物件についてのみオンバランスすることが主旨であるはずなので、それ以外のケースでは従来通りオフバランスで構わないのではないかという意見があってもおかしくないでしょう。

したがって、日本基準のリース会計における300万円ルールや有形固定資産会計の20万円ルールなどを経験してきた日本企業が、IFRSと対峙する局面で、「自社にとっての重要性とはなにか」について、きちんと検討できる能力があるかどうかが問われることになるでしょう。

そうでなければ、不必要に僅少な取引についても、煩雑な処理をせざるをえなくなるのです。

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  Part22:有給休暇引当金開示の実態と分析(2014/9/9)    
  Part23:開発費資産計上の実態と分析(2014/11/10)   
  Part24:賦課金の会計処理と固定資産税(2015/11/18)  
  Part25:闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題(2016/9/9)   
  
IFRS対応プロジェクト最前線
Part1:影響度調査での重要性(2010/10/19)
Part2:影響度調査が終わったら(2010/10/25)
Part3:グループ会計方針(2010/11/23)
Part4:影響度調査後のプロジェクト体制 (2010/12/9)
Part5:公開草案への対応 (2011/1/7)
Part6:影響度調査の盲点 (2011/1/21)
Part7:IFRS適用時の監査対応 (2011/2/21)
Part8:2011年3月時点でのIFRS対応状況(2011/3/14)
Part9:IFRS適用時期と大震災(2011/4/27)
Part10:中国子会社の決算期ズレへの対応方法(2011/5/18)
Part11:IFRSでの勘定科目体系(2011/5/27)
Part12:グループ会計方針での重要性の判断規準(2011/6/1)
Part13:自見庄三郎金融担当大臣の談話に関する留意点(2011/6/27)
Part14:6月30日の企業会計審議会の議論について(2011/7/14)
Part15:IFRS適用の今後の展開予測(2011/7/14)
Part16:さまざまなグループ会計方針書(2011/8/31)
Part17:IFRS決算体制はいつから検討するか(2012/2/8)
  Part18:馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット(2012/4/11)
  Part19:金融商品としての売掛金の開示(2012/4/24) 
  Part20:うちはどうするIFRS?(2012/6/19)  
  Part21:膨大な注記への対応(2012/7/31)
  Part22:定額法への減価償却方法の変更の動向(2012/8/27) 
  Part23:減価償却方法変更の記載事例(2012/9/16)  
  Part24:耐用年数変更の記載事例(2012/10/1)   
  Part25:監査法人へのIFRS対応報酬の支払状況(2012/11/12)  
  Part26:IFRS任意適用の動向(2013/4/2) 
  Part27:J-IFRS(日本版IFRS)のねらい(2013/6/20)  
  Part28:IFRSの任意適用を拡大させる第一弾か?(2013/6/23)   
  Part29:IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割(2013/9/2)    
  Part30:日本企業同士の合併とIFRS(2013/10/11) 
  Part31:新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか(2013/12/24)  
  Part32:自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載(2014/6/5)
  Part33:骨太の方針とIFRS(2014/6/27)  
  Part34:任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性(2015/1/13)     
  Part35:注記情報の大幅削減が可能に!!(2015/2/9)  
  Part36:開示ボリュームを激減させる具体例(2015/5/14)   
  Part37:連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況(2015/6/9)   
  Part38:IFRS適用の対応コスト(2015/6/9)     
  Part39:4つの会計基準収斂の方向性(2015/6/9)  
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  Part42:単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き(2016/9/9)
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中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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