有限会社ナレッジネットワーク 公認会計士 中田清穂のサイト ホーム 有限会社ナレッジネットワーク 公認会計士 中田 清穂
ホーム > 週刊中田コーナー >IFRS対応プロジェクト最前線 Part41:丸紅の初度適用(短信からの初度適用)(2015/9/8)
IFRS対応プロジェクト最前線 Part41:丸紅の初度適用(短信からの初度適用)(2015/9/8)

IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」では、23項以降で、「IFRSへの移行についての説明」を求めています。

いわゆる「IFRSへの移行に関する調整表」(以下「IFRS移行調整表」)です。

「IFRS移行調整表」は、「資本」と「包括利益」の2つの項目で、以下の表のタイミングについて作成し、開示する必要があります。



1. 有価証券報告書で初めてIFRSの開示を行う場合:

この場合、「IFRS移行調整表」を有価証券報告書で開示する必要があります。
翌期の四半期報告書には開示する必要はありません。

2. 四半期報告書で初めてIFRSの開示を行う場合:

この場合、各四半期の四半期報告書すべてに「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
また、その年度末の有価証券報告書も「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
一番開示工数がかかるケースといえます。

なお、上記1と2のケースは、金融庁の以下のサイトの資料で示されている、「資料1」及び「資料2」のケースです。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091201-1/17.pdf

3. アニュアルレポートで初めてIFRSの開示を行う場合:

アニュアルレポートで「IFRS移行調整表」を開示する必要があります。
しかし、有価証券報告書や四半期報告書には、「IFRS移行調整表」を開示する必要はありません。

このケースは、金融庁の以下のサイトで示された文書にあります。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100616-2.html


4. 連結決算短信から初めてIFRSの開示を行う場合:

有価証券報告書、四半期報告書及びアニュアルレポートのいずれにも、「IFRS移行調整表」を開示する必要はありません。

丸紅は、IFRS適用した際に、以下のようなスケジュールで開示しました。

(1) 2013年5月8日: 2012年度連結決算短信(米国基準)公表
(2) 2013年6月21日: 2012年度有価証券報告書(米国基準)提出
(3) 2013年8月7日: 2012年度連結決算短信(IFRS)公表
(IFRSベースの有価証券報告書は作成していない)
(4) 2013年8月7日: 2013年度第1四半期連結決算短信(IFRS)公表
(5) 2013年8月14日: 2013年度第1四半期報告書(IFRS)公表

「IFRS移行調整表」は、(3)の2012年度連結決算短信(IFRSベース)にのみ開示されていて、それ以降の四半期報告書や有価証券報告書には一切、「IFRS移行調整表」が開示されていません。

このケースについては、金融庁のサイトで触れられているものが見当たりません。
丸紅は、上記3のアニュアルレポートで金融庁が認めた方法について「類推適用」したものと思われます。

IFRS対応プロジェクト最前線 Part18:馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット(2012/4/11)
http://www.knowledge-nw.co.jp/syuukan20120411.html
でも説明した通り、有価証券報告書や四半期報告書は、金融庁への提出書類であり、同じ情報であっても、現場での工数が大きく異なることが多いので、何を開示するのかは非常に重要です。

これからIFRSを適用する企業は、
「どの文書でIFRSを始めて開示するのか」
ということが、非常に重要なポイントであることを理解して、無駄な工数を極力抑えて欲しいです。

週刊中田コーナー掲載内容へのご質問は、ナレッジネットワークお問い合わせまでどうぞ!
 
カレントトピックス
災害時の開示
Part1:災害時の決算処理(2011/3/18)
Part2:特定非常災害特別措置法(2011/3/28)
Part3-1:三洋電機(適時開示−地震発生から2日後)(2011/3/29)
Part3-2:三洋電機(適時開示−地震発生から約2ヶ月)(2011/3/29)
Part3-3:三洋電機(半期報告書:後発事象)(2011/3/29)
Part3-4:三洋電機(四半期決算短信)(2011/3/29)
Part3-5:三洋電機(有価証券報告書)(2011/3/29)
Part3-6:三洋電機(招集通知)(2011/3/29)
Part4:後発事象の開示事例集(2011/3/30)
Part5:法務省「定時株主総会の開催の延期」について(2011/3/30)
Part6:有価証券報告書での開示事例集(2011/4/1)
Part7:東日本大震災に関する有報での開示事例集(2011/4/4)
Part8:協会会長通牒にある『阪神・淡路大震災に係る災害損失の会計処理及び表示について』(2011/4/6)
Part9:東日本大震災の四半期報告書での開示事例集(2011/4/13)
Part10:国税庁の「災害に関する法人税、消費税及び源泉所得税の取扱いFAQ」(2011/4/18)
Part11:国税庁の法令解釈通達「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」と質疑応答事例(2011/4/22)
 

IFRS開示事例研究
Part1:HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約
(2015/6/9) 
  Part2:日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示
(2015/7/28)
  Part3:改定されたIAS第1号「財務諸表の表示」(開示イニシアチブ)の適用状況調査(2015/7/28) 
  Part4:定率法の採用を表現している企業の開示(2016/3/8)
  Part5:金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」(2016/4/7)   
 
子会社のIFRS
Part1:組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方
(2014/12/11)
   
IASB概念フレームワークと日本版IFRS
Part1:保守主義の復活?
(2013/10/22)
  Part2:発生可能性(蓋然性)の取り扱い(2013/11/1) 
  Part3:「純利益とOCI及びリサイクリング」の取り扱い(2013/12/4)  
   
日本企業をダメにする会計制度
Part1:開発費会計
(2013/2/3)
  Part2:減損会計
(2013/2/11)  
  Part3:のれん
(2013/2/21)   
  Part4:リース会計
(2013/4/1)
   
個別論点IFRS
Part1:金型(2011/1/28)
Part2:広告宣伝費、販促費及び通信販売のカタログ(2011/2/4)
Part3:IFRS適用で失われる税務メリット(2011/2/11)
Part4:支払利息の原価参入(2011/2/26)
Part5:有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(2011/4/18)
Part6:投資不動産とリース会計(2011/6/10)
Part7:棚卸資産会計での製造間接費の配賦における「正常生産能力」(2011/6/19)
Part8:外貨建取引の換算と個別会計システム(2011/9/7)
Part9:減損の兆候(2011/9/26)
Part10:経済的耐用年数のあの手この手(2011/10/13)
Part11:現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定(2011/10/29)
Part12:有給休暇引当金を計上しないケース(2011/11/9)
Part13:自己株式を取得するための付随費用(2011/12/15)
Part14:有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)(2011/12/26)
Part15:退職給付会計と年金数理人(2012/1/23)
Part16:製品原価計算項目の会計基準差異の税務上の取扱い(2012/3/13)
  Part17:棚卸資産の評価とAging(長期滞留)(2012/5/23)
  Part18:資本的支出後の減価償却資産の償却方法等(2012/12/24) 
  Part19:開発費の償却費は原価参入するべきか?(2013/4/3)  
  Part20:有給休暇引当金の対応事例(2014/1/24)  
  Part21:改定後IAS第19号の退職給付の開示事例(2014/4/3)   
  Part22:有給休暇引当金開示の実態と分析(2014/9/9)    
  Part23:開発費資産計上の実態と分析(2014/11/10)   
  Part24:賦課金の会計処理と固定資産税(2015/11/18)  
  Part25:闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題(2016/9/9)   
  
IFRS対応プロジェクト最前線
Part1:影響度調査での重要性(2010/10/19)
Part2:影響度調査が終わったら(2010/10/25)
Part3:グループ会計方針(2010/11/23)
Part4:影響度調査後のプロジェクト体制 (2010/12/9)
Part5:公開草案への対応 (2011/1/7)
Part6:影響度調査の盲点 (2011/1/21)
Part7:IFRS適用時の監査対応 (2011/2/21)
Part8:2011年3月時点でのIFRS対応状況(2011/3/14)
Part9:IFRS適用時期と大震災(2011/4/27)
Part10:中国子会社の決算期ズレへの対応方法(2011/5/18)
Part11:IFRSでの勘定科目体系(2011/5/27)
Part12:グループ会計方針での重要性の判断規準(2011/6/1)
Part13:自見庄三郎金融担当大臣の談話に関する留意点(2011/6/27)
Part14:6月30日の企業会計審議会の議論について(2011/7/14)
Part15:IFRS適用の今後の展開予測(2011/7/14)
Part16:さまざまなグループ会計方針書(2011/8/31)
Part17:IFRS決算体制はいつから検討するか(2012/2/8)
  Part18:馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット(2012/4/11)
  Part19:金融商品としての売掛金の開示(2012/4/24) 
  Part20:うちはどうするIFRS?(2012/6/19)  
  Part21:膨大な注記への対応(2012/7/31)
  Part22:定額法への減価償却方法の変更の動向(2012/8/27) 
  Part23:減価償却方法変更の記載事例(2012/9/16)  
  Part24:耐用年数変更の記載事例(2012/10/1)   
  Part25:監査法人へのIFRS対応報酬の支払状況(2012/11/12)  
  Part26:IFRS任意適用の動向(2013/4/2) 
  Part27:J-IFRS(日本版IFRS)のねらい(2013/6/20)  
  Part28:IFRSの任意適用を拡大させる第一弾か?(2013/6/23)   
  Part29:IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割(2013/9/2)    
  Part30:日本企業同士の合併とIFRS(2013/10/11) 
  Part31:新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか(2013/12/24)  
  Part32:自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載(2014/6/5)
  Part33:骨太の方針とIFRS(2014/6/27)  
  Part34:任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性(2015/1/13)     
  Part35:注記情報の大幅削減が可能に!!(2015/2/9)  
  Part36:開示ボリュームを激減させる具体例(2015/5/14)   
  Part37:連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況(2015/6/9)   
  Part38:IFRS適用の対応コスト(2015/6/9)     
  Part39:4つの会計基準収斂の方向性(2015/6/9)  
  Part40:IFRS財団は日本の現状をどう見ているか(2015/7/28)   
  Part41:丸紅の初度適用(短信からの初度適用)(2015/9/8)   
  Part42:単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き(2016/9/9)
  Part43:米国基準を適用している企業の動き(2017/3/15)
  
中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


このページの先頭へ
Copyright(C) 2010 Knowledge Network.Ltd All Rights Reserved.