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中田版『IFRSの誤解』 Part4:IFRSの適用時期(2010/10/05)

【誤解】基準改定スケジュールが遅れており、アメリカも後退気味なので、日本のIFRS適用時期も当初予定の2015年または2016年よりも遅れる。
  ↓
【実際】基準改定スケジュールが遅れており、アメリカも後退気味なのは確かですが、日本のIFRS適用時期が遅れることはないと思います。

IASBとFASBの共同作業によるIFRSの改定作業は、従来予定されていた項目については、当初2011年6月で完了する予定でした。
しかし、一部の会計基準については、2011年12月までに延ばされています。
まずは、この動きをどう見るかです。
特に、「さらに遅れる可能性があるかどうか」です。

私の意見では、「2011年12月よりも遅れる可能性はまずない」と考えています。
なぜなら、世界中の多くの国が、2012年をターゲットにIFRSのアドプションやコンバージェンスを完了させる予定にしているので、2011年12月よりも改定作業が遅れると、多くの国で混乱や追加工数が発生するからです。
当初2011年6月を完了目標にしたのも、6ヶ月間のバッファーを設けていたのだと思います。つまり今はそのバッファーを使い始めているに過ぎないということです。
IASBは決死の覚悟で、2011年12月までには、すべての改定作業を終えるでしょう。

次にアメリカではIFRS対応が後退気味ですが、この動きが日本でのIFRS導入を遅らせることへの誘因になるのではないかという観測についてです。
確かに日本はいろいろなことについて、これまでアメリカに追随する動きをしてきました。
しかし、今回はどうでしょうか。
私の意見では、「今回はアメリカには追随しない」と考えています。
その論拠は、以下です。

これまで日本はIFRS対応について後手後手でした。
それはアメリカも同じです。
こんなに短い期間にIFRSが世界中で使用されるとは想定していなかったのです。
しかし、日本とアメリカの違いは、想定が外れた瞬間における対応の違いです。
アメリカは、将来IFRSへのアドプションを前提としたロードマップを作成すると同時に、一部のコンバージェンス作業を棚上げにして、IASBと共同でIFRSの改定を行う戦略に切り替えました。
これに対して日本は、将来IFRSへのアドプションを前提とした中間報告を作成しましたが、コンバージェンスは続行し、IFRSの改定作業に参加することはできませんでした。
その結果、IFRSやその概念フレームワークについて、アメリカの事情を考慮しながら改定されますが、日本の事情は、ときどき意見を聞いてもらえることはできても、一緒に改定するところまでは踏み込めないのです。

これでは、親子上場、株式の持ち合いや日本独特の年金制度や雇用制度なども、きちんと考慮された上でIFRSを改定することができなくなる恐れが高いのです。
結局日本では実態に合った決算が難しくなり、最終的には上場企業に負担と無理を強いることになるでしょう。
ですから、日本はこれまで出遅れてきたIFRS対応について、その遅れを取り戻し、アメリカとともにIASBとの基準開発作業に参加できるようにしたいのではないでしょうか。
そうなると、アメリカのIFRS対応が後退気味だからといって、日本も後退するような判断はしないのではないでしょうか。
逆に、アメリカが後退気味であることをチャンスにして、日本は中間報告での予定通りIFRSを適用し、積極姿勢をアピールするのではないでしょうか。

アメリカでも認めていないIFRSの任意適用を、日本が先行して認めているのも、その表れのように思います。
すでに日本はアメリカへの追随路線から外れ始めていると言えるでしょう。


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中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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