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IFRS対応プロジェクト最前線 Part7:IFRS適用時の監査対応(2011/2/21)

現在進められているIFRS対応プロジェクトでは、IFRSに準拠した財務諸表や注記をいかに作成するかに、もっとも神経を集中させているところだと思います。

しかし、会計アドバイザリーを委託されている当の会計監査人ですら、実際にIFRSが適用された場合の監査手続きなどへの影響については、まだまだ考えが及んでいないことも多いと思います。

これまで実際のIFRS対応プロジェクトで会計監査人から対応が求められている例としては、以下のような項目があります。

@ 実地棚卸で必要となる在庫リスト:
売上の計上タイミングが、出荷時から着荷時あるいは検収時に変わると、積送中の物品も棚卸資産であり、棚卸の対象になります。
実際に運送会社に引き渡せば、自社敷地内にモノがないので実地棚卸はできませんが、実際にはトラックなどへの積荷待ち状態になっている場合など、実地棚卸日には工場などの自社敷地内にあってカウントできる場合があります。
このような場合には、会計監査人がカウントできない状態なのか、実はカウントできるのかを在庫リストのステータス欄などで識別できるようにするよう、会計監査人が依頼するケースがあります。
これにともなって、従来の出荷基準から着荷基準に変更する対応として、取引ごとに変えるのではなく、決算手続きとして、出荷済みで未着荷状態のデータを集計し、決算組替仕訳で対応する場合には、在庫管理システムにも反映するか、実地棚卸の際には、各現場に、出荷済みで未着荷状態の製品リストなどを用意するなどの対応が、会計監査人から求められるようです。

A 残高確認状:
監査手続きのために、会計監査人から残高確認状の作成依頼が毎期発生します。
売上の計上タイミングが、出荷時から着荷時あるいは検収時に変わると、売掛金の残高も同様の影響を受けます。
このため、従来の出荷基準から着荷基準に変更する対応として、取引ごとに変えるのではなく、決算手続きとして、出荷済みで未着荷状態のデータを集計し、決算組替仕訳で対応する場合には、会計帳簿への反映だけでなく、残高確認状へも同様の反映を行うか、出荷済みで未着荷未検収の取引の確認を、残高確認状の添付資料などで補うなどの対応が求められるようです。
会計システムの上流にあたる債権管理システムへの反映も検討される場合があります。

B 増減分析:
期末監査などに着手する際に、毎期最初に行われるのが、各勘定科目の増減分析です。
このために会計監査人が費やす工数は膨大です。
特に、すべての勘定科目について、前年度末や前年同期の金額と当期の金額を併記して増減額や増減率を算出する表(勘定科目別増減分析表)の作成にかなりの時間がかかっています。
最近では、非監査会社の会計システムなどからデータをダウンロードして、PCなどで効率的に勘定科目別増減分析表を作成する監査法人や公認会計士も多くなりました。
日本基準とIFRSの会計差異について、会計システムで対応せず、システム外で組替を行う場合には、上記のように、会計システムなどからデータをダウンロードして勘定科目別増減分析表を作成することができないために、IFRSベースの財務諸表の勘定科目別増減分析表については、非監査会社側に作成を依頼するケースがあるようです。

C セグメント情報の監査:
会計基準がIFRSになるからといって、役員会資料をIFRSベースにする必要はないので、役員会資料は従来通り日本基準を基本として作成するケースが多いようです。
ただ、今年からセグメント情報はマネジメント・アプローチに切り替わりましたので、役員会資料が従来の日本基準をベースにしていると、報告セグメントの売上高や各種利益の金額の合計が、IFRSベースの連結財務諸表の金額と合わなくなるので、売上高、利益あるいは資産や負債なのについて、差異調整表などを作成する必要があり、重要な項目については個別に表示することになるようです。
この場合には、役員会資料の合計と、IFRSベースの連結財務諸表の金額の不一致の内容が確認できる項目別一覧表などの資料の作成を、会計監査人から求められるケースがあるようです。

このように、IFRS対応をする上で、工数をかけない対応を検討することは重要ですが、実際に監査手続きが行われる場合に、結局、追加的な手続きが必要になったり、非効率になったりすることがないよう、注意することも重要だと思います。


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中田版『IFRSの誤解』 
Part1:包括利益(2010/8/6)
Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』


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