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個別論点IFRS Part1:金型(2011/1/28)

「個別論点IFRS」は、市販のIFRS関連書籍などではあまり取り上げられていない論点を、IFRS対応プロジェクトを進めていく中で発見するたびに、無秩序に取り上げて、私見を論じる内容です。

第1回は、「金型」を取り上げます。
金型は、メーカーであれば多くの場合、保有していたり貸与していたりするので、何らかの影響を受ける企業も多いと思います。
また、金型を実際に使用するのは、中小・零細企業が多く、その管理や実体の把握には、実務上難しい局面が多いので、慎重に調査し、混乱させず、きちんと対応できるように、十分な時間をかける必要があるでしょう。

以下では、自社で使用するケースと他社に使用させるケースに分けて考えます。

1. 自社で金型を使用するケース

(1) 自社で使用する金型を購入する場合:
自社で利用するために金型を購入した場合、その金型が一会計期間を超えて利用される場合には、償却方法、耐用年数及び残存価額などについて、有形固定資産としてIAS第16号「有形固定資産」の基準に従う必要があります。
特に、日本では税務上の耐用年数表に基づいて、2年で償却する処理がほとんどだと思います。
しかし、IAS第16号「有形固定資産」では、使用可能な期間にわたって期間配分が必要なので、10年間使えて、使用する意図もある場合には、10年を償却期間とする必要があります。

(2) 自社で使用する金型を借りる場合(リースも含む):
自社で利用する場合には、その金型を購入する場合が多いと思いますが、他社からの貸与を受ける場合もあると思います。部品メーカーなどが、完成品メーカーから金型を借りるようなケースです。
この場合には、IAS第17号の公開草案「リース」のリース取引に該当する場合があるので注意が必要です。
現在でもファイナンス・リースに該当すれば、リース会計での処理が必要ですが、2010年8月17日にIASBから公表された公開草案「リース」によれば、明らかに「リース契約」とされていなくても、「特定の資産又は資産群を使用する権利が、一定期間にわたり、対価と交換に移転される契約」であれば、これらはみなリース契約とみなされます。
したがって、「特定の金型と使用する権利が、一定期間にわたり、対価と交換に移転される」ような取引であれば、リース会計の処理をしなければならなくなそうです。
つまり、借りている金型について使用権資産を計上し、負債としてリース料支払債務を計上することになります。

2. 他社に自社の金型を使用させるケース

(1) 他社が金型を購入して、他社が使用する場合:
他社が金型を購入して利用するだけなら問題はありません。
しかし、他社が購入する金型の代金を自社が12回払いなどで支払ってあげるケースでは、判断が必要になる場合があります。
他社から仕入れる部品や商品の単価に当該金型の12回分割払いの金額を含めているのか、あるいは部品単価などとは別に支払っているのかといった支払形態や、単価に含めていても12回分割払いの後の単価については、きちんと金型代を単価には含めずに単価を下げているかどうかといった単価の取扱い、などが判断の材料になるでしょう。
つまり、このケースでは、実質的に自社が金型を購入して、他社に「金型を貸している」のではないか、だからリース取引ではないかということが問題となるのです。
この場合、自社側では、当該金型を有形固定資産として計上し、IAS第17号の公開草案「リース」の「貸手のリース手続き」により、「履行義務アプローチ」か「認識中止アプローチ」のいずれかの手続きが必要になるでしょう。
逆に他社は、当該金型を有形固定資産としては資産計上せず、IAS第17号の公開草案「リース」の「借手のリース手続き」として、使用権資産を計上し、負債としてリース料支払債務を計上することになります。
当該「他社」が、連結対象子会社であったり、関連会社である場合には、IFRSの処理をさせるか、組替仕訳を作成する必要があるでしょう。

(2) 他社が使用する金型を自社が貸す場合:
自社側では、当該金型を有形固定資産として計上し、IAS第17号の公開草案「リース」の「貸手のリース手続き」により、「履行義務アプローチ」が「認識中止アプローチ」のいずれかの手続きが必要になるでしょう。
逆に他社は、当該金型を有形固定資産としては資産計上せず、IAS第17号の公開草案「リース」の「借手のリース手続き」として、使用権資産を計上し、負債としてリース料支払債務を計上することになります。
ただ、契約上は「貸している」かたちになっていても、実体として、その金型の売却や処分が他社側で自由にできるなど、実質的には当該金型を他社が「支配している」場合には、当該取引は、リース契約ではなく、売買契約として処理しなければなりません。
この場合には、IAS第17号の公開草案「リース」ではなく、IAS第18号の公開草案「顧客との契約から生じる収益」に基づいて会計処理をする必要があります。



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Part2:連結の範囲 (2010/8/30)
Part3:棚卸資産会計(2010/9/27)
Part4:IFRS適用時期(2010/10/05)
Part5:海外子会社の機能通貨(2010/10/12)
Part6:収益認識(FOBとCIF)(2010/11/8)
Part7:初度適用と海外子会社のPL換算(2010/12/29)
Part8:IAS第16号の「一会計期間」は「一年」(2011/1/14)
Part9:海外子会社の機能通貨(その2)(2011/3/7)
Part10:子会社の会計方針の統一(2011/3/28)
Part11:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある(2011/7/25)
Part12:IFRSは投資家にとっても役に立たない(2011/8/1)
  Part13:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる(2014/2/24)   
  Part14:開示義務の明文規定がある場合には、すべて開示しなければならない(2014/5/9) 
 
勝手に解説『山田辰己理事のIASB会議レポート』
Part1:連結子会社の開示
 (2010/8/17)
Part2:概念フレームワーク
 (2010/8/23)
Part3:アメリカの動向(2011/8/23)
 
『グループ法人税制が与える連結決算への影響』
Part1:固定資産未実現に係る税効果の会計手続き(譲渡損益調整資産の取扱い)(2010/9/7)
Part2:連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き
(2010/9/13)
Part3:中小特例の取扱い(2010/9/21)
 

『やさしく深掘り IFRSの概念フレームワーク』
『やさしく深掘り IFRSの有形固定資産』
『わかった気になるIFRS』
『連結経営管理の実務』
『内部統制のための連結決算業務プロセスの文書化』



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